マスターから聞いた戦争体験

雑記

私は祖父母からほとんど戦争の話を聞いたことがありません。祖母はそういう話をしたがらなかったし、出征した祖父は病気で私の幼い頃亡くなりました。空襲や爆撃の体験は本で読むだけのものでした。この前訪れた喫茶店のマスターは80歳代。何の話がきっかけか忘れましたが、マスターは子どもの頃の話を始めました。「わしの頃は天皇はそりゃえらいもんやった。道の一段低いところで土下座して、通り過ぎるまで顔を上げてはいかんかった」「馬に乗った軍人もえらいもんやったな。やっぱり通り過ぎるまで頭下げとった」。

マスターのお兄さんは出征後、病気で陸軍病院に入院したのでお見舞いに訪れたそうですが、軍人としてのお兄さんは家族の中では偉い存在でお見舞いのたびに餅をついて持っていったそうです。戦争末期、隣町に飛行機の工場があったため町も何度か空襲に遭いました。軍人の顔が肉眼で見えるほど戦闘機が接近してきて、男と女のアベックだったので驚いていると撃ってきたそうです。いや、えらいもんやったな。

マスターは戦争体験を話すのに慣れているのか、時々笑顔を見せながら淡々と戦中の日々を語り、長く生きるといろんなことを体験するものだと言い話を締めくくりました。体験者から直接聞く話の生々しさと生き延びた人の持つ強さとを感じました。

戦後の食糧難の頃にはマスターの実家の家業である食料品店の店先で行商の娘さんたちがパンや牛乳を売ったそうで、当時の相場としては高級品でしたがよく売れたそうです。喫茶店を開いたのは40年ほど前らしいですが、開店の経緯については聞き忘れました。今は店でコーヒー飲むのは贅沢だという人もいるね、そんな贅沢とは思わないんだけどね、とマスターは私に同意を求めてきました。

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