公共交通機関を利用して旅行に出かけていると、場所によっては交通の便が悪い場所がある。電車やバスを1本逃すと1時間待ち、くらいならまだしも、その日の旅程が全部崩れてしまい宿にチェックインできないことも。それが分かっていても、ギリギリの時間まで喫茶店に粘っていてしまい、走っても間に合うかどうかの状況に追い込まれたことが何度もある。大体は何とか間に合ったのだが、走ってもどうしようもないこともあった。焦っている私を見かねてか、最寄り駅まで送ってもらったことも何度か経験している。
四国地方のとある軽食喫茶店に入った時は1時間半で戻らねばならないのに、電車が出る45分前に入店してナポリタンなんかを頼んだものだから絶対これは間に合わないという時刻になってしまった。店から駅までは20分近くある。焦った私は店の人にタクシー会社の電話番号を尋ねたが、タクシー会社はこの辺にはないという。もちろん、路線バスもない。ツメが甘すぎる自分に絶望していると、マスターのお母さんらしき方が、今から車を走らせたら2つ先の駅の発車時刻には間に合う。送ってあげなさいと言い、カウンター席でやきうどんを食べていた常連らしき女性も、乗せていってもらったほうがいいよ、と言う。私はそのご厚意に甘えることになった。
2つ先の駅は車で20分くらいかかったが、途中道路工事で片側車線のみ通行許可を出している区間もあった。店でマスターとは全然会話をしていなかった。なんで旅行者が駅前でもない地元民しか来ないようなうちの店に来ているんだろうな、と思われているんだろうなと考えるといたたまれなかった。マスターはそれを察したのか、この辺は昨年タクシー会社も潰れてしまったし、バスもないし、本当に不便なところなんですよ。お客さんを送っていくことはあるんですよ、と何でもないように仰るが、それでも非常に申し訳なかった。ガソリン代も受け取ってくださらなかった。また気軽に来られる場所でもない。ご厚意に甘えるばかりで申し訳なかった。
四国地方の喫茶店では2回も駅まで送ってもらったことがある。この町には親戚など地縁はないのだが、雰囲気が好きでさんざん建物を撮った後に入店して、さらにのんびりしすぎて遅れた。まるで学んでいない。前回訪れた時は駅の発車時刻に間に合いそうもないということで焦っていたら、店のママさんが車を出して送ってくださった。3年後に再訪問してあの時のお礼の手土産を渡したまではよかったが、また電車の時間がギリギリという事態に。走れば間に合う時間だったが、また送っていただいた。お客さんを送るのはよくあることだから気にしないでと仰っていたが、旅行者で2度も送ってもらうという厚かましいことをしたのは私ぐらいではないだろうか。なお、ママさんは前回私が店に来たことを覚えていた。それでも、気にしないでと仰っていた。この店から駅までは車で7分くらいだった。
最後は閉業した店なので名前を出すが、11年ほど前に家族で訪れた埼玉・行田の鉄剣タローというお店。こちらはうどん、トーストサンド、ハンバーガーのレトロ自販機が稼働している店で、当時ネットメディアやローカル番組で取り上げられていた。たまたま店主さんが店にいたのだが、駐車場の車に戻ることなく、徒歩で帰ろうとする無謀な親子連れにあきれたのかもしれない。これから戻るからついでだし駅まで乗っていって、と仰った。
せっかくの機会なので、図々しくうどん自販機について尋ねてみると、自販機に入れるかき揚げは冷やさないといけないのだけれど、それをよく知らないお客さんが揚げたてをほしがるのよね、と言っていたことが今でも思い出される。うどんやつゆ、かき揚げを製造している中の人に話を聞けたこと、仕事に愛着を持っていることがレトロ自販機をよく知らない自分にもよく伝わってきて、印象深い出来事だった。
この話に関して特にオチはない。ご厚意に甘えてばかりのなさけない話。近年は、特に地方での公共機関での移動は年々かなり難しくなっている。電車の本数が数少なく、それを逃すと移動は車しかないような場所は、まずは発車時刻に絶対に遅れないようにするべきなのです。
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