歳をとったと思うことのひとつが、コーヒーをあまり飲めなくなったことです。立て続けに2、3杯飲むと胃にもたれてお腹を壊したり頭痛がするようになったので、1日に飲む量を控えるようになりました。ちょうどその頃からコーヒーの値段も値上がりしましたし。インスタントコーヒーやコーヒー豆は約2割の値上げで買いづらくなりました。現在、自宅で飲むカフェインはティーバッグの紅茶に移行しつつあります。しかし普段使いの紅茶はストレートで飲む分にはいいですが、ミルクを入れるとやや紅茶の味が負けてしまいがちです。かといって、放置するとすぐに苦くなってしまいます。
そんなときに知ったのがイギリス産のYorkshire Tea(ヨークシャーティー)でした。本国ではティーバッグの紅茶のブランドとして有名で、Builder’s Tea(建設現場で働く人の紅茶)として知られています。同様の他社のブランドにはTetleyやPG Tipsなどがありますが、ヨークシャーティーのほうが人気が高いようです(TetlyやPG Tipsはより廉価なので、本当はこちらが真の庶民の紅茶なのかもしれません)。ヨークシャーティーの茶葉はケニアなどアフリカ産の茶葉がブレンドされ、茶葉も日本のティーバッグよりやや多いので濃いめに抽出されます。抽出方法はマグカップにティーバッグを放り込み、お湯を注ぐだけ。ヨークシャーティーを淹れるネット動画を見ましたが、お湯を注ぐ前にマグカップに砂糖を入れたり、ティーバッグを取り出す際に「絞る」工程があるので驚きました。濃く抽出して砂糖はたっぷり、ミルクを入れて飲むのがヨークシャーティーの基本のようです。

現地のスーパーマーケットではティーバッグ600個入りの商品(大袋です)も販売されているヨークシャーティーですが、日本では輸入されていません。また超円安の現在、それほど安価ではないのが残念です(2026年1月現在、40バッグ入りの商品でで約1300~1400円)。250g入り茶葉の商品のほうがまだ安価かもしれません。ヨークシャーティーの購入は総輸入代理店での通販か、可能であれば路面店をお勧めします。アマゾンなどの通販にはかなり割高なものもあるので。
ティーバッグのヨークシャーティーの淹れ方は前述のとおり、大きめのマグカップ(200ml以上入るものが望ましい)にティーバッグを入れ、熱湯を注ぎ3-4分待って取り出します。お湯を入れた直後はややオレンジがかった色ですが、次第に黒っぽく変化していきます。日本のティーバッグと違うところは紐(タグ)なしのティーバッグであることと(ヨークシャーティーはタグ無しも輸入・販売されていますが、あまり見かけません)、また、5分ほど放置しても、日本のティーバッグとは異なり苦みは強く出ないようです。ちなみにリプトン・イエローラベルの推奨抽出時間は1分です。日本の紅茶のように香り高くはないものの、ミルクティー向けに濃くて苦すぎない紅茶が抽出できる点が特徴です。労働者向けのカフェイン強めの紅茶なので、ミルク・砂糖を入れて飲むのが基本らしいですが、個人的にはミルクのみで、砂糖は入れないのが好みです。
というわけで、「庶民の紅茶」としての入口からヨークシャーティーを知ったのですが、日本国内にはヨークシャーティーを飲めるお店もあるようです。以前訪れた大阪・弁天町の紅茶専門店リーフはムジカティー(大阪・堂島で創業の老舗紅茶専門店)を提供しているという前情報を得て立ち寄ったのですが、メニューにヨークシャーティーがあるのを見てとても驚きました。迷った末、注文したのはムジカティーの茶葉でしたが、あとでお店の方にヨークシャーティーの淹れ方を尋ねたところ、茶葉を抽出しているとのことでした。ティーバッグ式の雑な淹れ方しか知らないので、茶葉は何か特別な淹れ方があるかどうか尋ねてみたところ、ポットやカップを事前に温める、茶葉を計る、沸騰したてのお湯を使う、など、他の紅茶の淹れ方と同様だと仰っていました。ヨークシャーティーの販売元、Taylors of Harrogate社は廉価な商品だけではなく高級な茶葉も販売しているので、総じてレベルの高い茶葉を提供している点がヨークシャーティーをお店で出す理由なのかな、と考えたのですが、実際どのような位置づけなんだろう。
東京にもヨークシャーティーが飲めるお店がありますが、本格的なイギリス料理やクリームティーを提供するお店にヨークシャーティーも置いてある、というパターンが多く、紅茶だけを飲みにいける雰囲気のお店はあまり見つけられていません。そんななか、手軽に利用できるのがアパレルブランド「マーガレットハウエル」のカフェでした。都内には数店舗ありますが、おそらく最初期(1999年)にオープンしたと思われる渋谷店を訪れました。

マーガレットハウエル・カフェではコーヒーも紅茶も扱っていますが、数種類ある紅茶メニューの三番目にヨークシャーティーが載っていました。ヨークシャーティーは普段遣いの庶民紅茶だという先入観があるので、こんなお洒落なカフェのメニューに載っているとちょっと吹きそうになるけど、ここは円安の日本なのだ。例えるなら、永谷園の海苔茶漬をイングランドの日本料理店で食べるようなものだろう(うまい例えができなくてすみません)。注文するとポットで提供され、ティーコジーもかけてくれます。ミルクも常温です。スコーンやキャロットケーキなどの菓子もメニューにあり、強くは主張していませんが、たしかにイギリス風のカフェでした。カフェで飲むヨークシャーティーは、茶葉で淹れたからか、環境の違いからか、自宅で飲むマグカップよりも少しだけ洗練された味に感じました。人の多い渋谷の街で、かなり落ち着ける立地なのもよかったです。
【追記】サムネイルはヨークシャーティーのパッケージと物語の締めの舞台がヨークシャー地方の小説「ストリート・キッズ」。
【追記2】ムジカティーや二代目の堀江敏樹さんのことがわかりやすくまとめられたティーハウス茶摩さんのサイトを読みました。日本で紅茶専門店を始めた老舗で、自社で茶葉を輸入し、独自ブレンドを販売したムジカティー。ブログには堀江さんの紅茶への考え方が紹介されていました。ブランドや缶入りの高い紅茶にこだわらず、温めたポットで適切に淹れれば良く、日常的に楽しむものだということ。ムジカ出身者のお店でヨークシャーティーを扱っていたのが、ようやくボンヤリとわかってきたような気がします。私がムジカの紅茶を知ったのは最近で、しかも都内のわりとお洒落な雰囲気のお店で購入したので、ムジカティー=高級、ヨークシャーティー=庶民のイメージを勝手に持っていました。なるほど。ちなみに、ムジカ出身者の紅茶の専門店にはヨークシャーティーを扱っているところもあるそうです(リーフのご主人から伺いました)。
【追記3】ある本で、イギリスの紅茶の輸入国は最初は中国、次がインド、現在はケニアなどアフリカが中心だと書かれていました。つまりかつて植民地だった国々ということで、本当にわかりやすいですね。現在、ヨークシャーティーのパッケージにはレインフォレスト・アライアンスのマークが印刷されていますが。コーヒー豆やカカオ豆と同じことです。「庶民の紅茶」という響きがよかったのでタイトルにしたけれど、(支配していた国の)を付けなければいけません。そして、生産者のことを考えて大切に飲まなくては。

コメント