このブログには基本的にだれでも書けるようなことしか書きません。こんな時代ですし、ブログを立ち上げたときからの自分とのお約束です。今回も、ちょっと調べれば誰でもわかるようなこと。その方面に詳しい方からは「わたし、みんな知っていたな」という感想を持っていただけるよう、全力を尽くします笑。
13年ぶりの大島
つまらない煽り文はさておき、伊豆大島に13年ぶりに行きました。前回の目的はリス村と元町の喫茶店でしたが、リス村にリスは大変少なく、元町の喫茶店は閉店か休業かで営業しておらず、肩を落とした記憶があります。波浮でも行ってみようか。波浮港の近くの通りにおしるこの幟が出ていたのを見つけました。中に入るとお菓子等の売店でしたが、テーブル席があり、壁にお品書きがありました。メニューはお志るこ、コーヒー、みつ豆、ビールの四品のみ。コーヒーとお汁粉を注文するとコーヒーはインスタントのようでしたが、お汁粉は手作りでした。ひっそりと営業している雰囲気で屋号の看板などは出しておらず、帰宅してからネット検索しても情報は得られませんでした。


まだ、あのお汁粉屋はあるのだろうか。再訪したいと思い調べてみました。店名はわかりましたが、営業時間などの詳細はわからずじまいで大島に着きました。波浮ではまず、ネットで調べた「カフェルームサン」に伺いました。店内は海に関する小物が飾られ、趣味でバンドをされているのか、店の奥には楽器が置いてあります。ナポリタンとアイスコーヒーを注文し、店内を観察していると波浮の昔の写真が飾ってあることに気付きました。波浮港に沢山の木造船が停泊している1950年代の白黒写真は、遠目に見ると住宅が密集しているように見えました。昔はサバがよく獲れたそうですが、今は魚が減ったし、燃料費は高くなる一方で漁業はふるわないとか。マスターに写真のことを伺っていると、そういう写真が好きだと思われたのか、古い写真を見せてくださいました。マスターの奥さんは波浮の出身で、子どもの頃は港エリアではなく高台のほうに住んでいたそうですが、港のほうには行くなと言われていたとか。「遊廓じゃないけど、2階の窓の手すりから女の人が手招きしている店が沢山あって。今もそういう建物がまだ残っているんじゃないかな」。バスで来たというと驚かれましたが、親切にも港のほうへ出る階段のところまで車で送ってくださいました。
お汁粉屋再訪
旧甚の丸邸と旧港屋旅館を見学後、そわそわしながらお汁粉屋があったエリアへ。もう営業をやめているのではないか。人気の鯛焼き屋に揚げたてコロッケを売る精肉店、お洒落なカフェ、くさやの販売店と軒並み定休日でしたが、お汁粉屋は初めてきた時と同じで戸が開いていました。お汁粉はさすがに真夏はやっていないだろうけど、何か食べられるかな。「大島牛乳アイス」の貼り紙があったので入店すると、店の奥の畳で店主のおばあさんが横になっていました。大島牛乳アイスは売り切れで入荷待ちのため、普通のアイスしかないと言われましたが、涼みたかったのでアイスを購入してテーブルで食べさせてもらいました。
10年以上前に伺ったときお汁粉を頂いたのですが、と尋ねると、お汁粉は11月から4月までで、コロナ前は夏場はかき氷をやっていたけど、漁業組合で氷を作らなくなったのでやめたとのことでした。お店の名前は松泉堂(しょうせんどう)で、昭和12年からやっていておばあさんで二代目。昔は和菓子を作ったり、お汁粉以外にもみつ豆や砂糖入りの牛乳を売っていたらしく、漁師さんがよく立ち寄っていたそうです。ご主人亡き後は一人のため、提供できるものが少なくなったとのことで、屋号の入った暖簾を出さなくなったのも、「食堂ですか、何か食べられますか」と尋ねる人が多いからだそう。この辺りは観光地のわりに飲食店が大変少なく、この通りにあるご飯屋さんはカフェを除くとお寿司屋さん1軒のみ。しかも人気店のため予約しないと入れないそうです。波浮はもともと飲食店が少ないエリアですが、13年ぶりに来て、島全体でも飲食店がやや減少しているように感じました。高齢化とコロナのあおりでしょうか。最近開業した新しいお店もありますが、大島のデジタル観光マップには「島内の飲食店数は限られているため、特にグループでは予約を推奨します。スーパーなどの惣菜やお弁当も利用しましょう」などの注意書きがありました。都内で配布されている観光マップにはそういうことは書かれておらず、島へ来て初めてわかったことでした。
波浮のカフェ
バスの時刻まであと十数分あったので、お汁粉屋の並びにあった商店をひやかすことにしました。土産物店と思われた店はHav Cafeというカフェで、古い建物をリノベーションして作られており、いい塩梅にお洒落な雰囲気でした(後でわかったのですが、東京・調布のカフェ、手紙舎さんを手がけた方が設計に携わっているそうです)。物販を物色したところ、波浮の経営者にインタビューしたZINE『Minor Peak Vol. 4』があり、即座に購入しました。冊子をパラパラめくると、Hav Cafeの店主さんの写真が載っています。店主さんによると著者は大島の高校出身で、波浮の地に縁があり取材を申し込まれたそうです。思いのほか雰囲気のよいカフェだったので、もっと早く知っていれば観光を切り上げてカフェを利用したのに、あと数分で来るバス時刻がうらめしいですと伝えたら、アイスコーヒーだけならすぐできますよ、と言われたので注文。グッと飲んでいってください、バスの音が来たら飛び出して行けばいいんだから、と言われたアイスコーヒーは大きなグラスになみなみつがれていました。グッと飲み干し名残惜しい顔で退店しようとすると、「大島は秋がいいですよ、近いからすぐ来れますし」と店主さん。そう、大島は近いのだ。また来ればいいのだ。もっと気軽に来ようと認識を改め、再訪を願いつつ店をあとにしました。
帰宅後、調べたことなど

伊豆大島はかつては酪農がさかんな島で、不足しがちな飲み水を確保するためと収入のために酪農をはじめたそうです(ぶらっとハウスHPより)。松泉堂さんでかつて提供していた砂糖入り牛乳は、おそらく島の名産品である牛乳を使ったものであり、砂糖を入れたのは牛乳が苦手な人にも飲みやすくするための当時の工夫だったのかもしれません。
『東京人』1997年8月号には太田和彦氏による伊豆大島の取材記事が掲載されています。記事タイトルは「大島のお汁粉は甘かった」。なんと、太田氏は波浮の松泉堂を訪れていたのです。昭和7年生まれのご主人がご健在の頃で、昔は店のある通りに飲食店がずらりと並び、そこで働く女性たちにお汁粉がよく売れたと書かれていました。ちなみに今はしまわれているという暖簾は、フリルのついた白地のものだったそうです。波浮は風待ちの港として明治から昭和初期にかけて賑わい、房州や三崎、遠くは岡山からも船が集まり、色街もあったたと書かれています。現在は静かな町ですが、近年はUターンや移住者が開業したお店が何軒か開店しています。
Hav Cafeで購入した冊子(Minor Peak Vol.4。Hav Cafe店主さんによればリトルプレスは現在休刊中とのことですが、在庫等の問合せはインスタDMまでとありました)には、観光地なのに立ち寄るお店が少ないので、Hav Cafeを始めたという経緯が書かれていました。店主さんはトラベルジャーナリストとして長く活躍してきた方で、世界各地への渡航経験をお持ちだそうです。カフェルームサンのご主人も国内各地を旅行した経験があると仰っていました。波浮で偶々訪れたカフェの店主がお二人とも旅行好きなのは偶然ではなく、様々な土地を旅行したなかで、波浮の地形や景色に引きつけられるものがあり、選択したのかなと思いました。


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